実は、長年使っているNEX-5が、数年前からコントロール・ホイールの方向キー機能の調子が悪く、思い通りに操作ができずにイラついていました。そこで、修理依頼を考えてメーカーのホームページで調べたところ、何らかの修理を行った場合は最低でも¥15,000ということでした。ところが、一年前の「前橋カメラ大中古市」で中古カメラ(ジャンクではありません)の値段を確認したところ、NEX-5はシリーズ最初の古い機種ということもあって、ボディーが\12,000で売っているではありませんか。それならばということで、次回の中古市で中古ボディーを購入することにしたのです。
予定通り6月の中古市で中古ボディーを探してみると、NEX-5は¥9,800になっていましたが、NEX-5Rが付属品すべてそろった状態で¥20,000で売っているのに目移りして、こちらを購入することにしました。
その段階で私の頭の中に「NEX-5のIR改造計画」がよぎっていたのは言うまでもありません。
天文ファンならばデジカメの「IR改造」が何を意味するか分かると思いますが、ご存知ない方のために少し説明しておきましょう。
かつてのカメラのフィルムに相当するのが、デジカメでは撮像素子と呼ばれる半導体です。この撮像素子は赤外線に対する感度が非常に高いので、そのままではカラーバランスが大きく崩れてしまうため、撮像素子の前に赤外線をカットするフィルターがついているのです。
一方、星空の中にはHα線という赤外線を出している魅力的な姿をした天体が多数あり、それらの天体を撮影するためには赤外線をカットしてしまうことは非常に不利な状態なのです。そこで、この赤外線カット・フィルターを外してしまおうという「IR改造」が、一部の天体写真マニアに広がってきているのです。もちろん改造のリスクは大きく誰にでもできることではないので、天文ファンを相手にIR改造を引き受けている業者に頼むのが一般的です。
さて、NEX-5のIR改造ですが、上記のように理屈はとても簡単で、要するにカメラを分解して赤外線カット・フィルターを外してしまえばよいわけです。ジャンク・カメラの分解を趣味とする私にとっては、これに挑戦しない手はありません。そこで、きっと同じようなことを実行している人がいるに違いないと思い、ネット検索してヒットした中で参考にしたのが以下のサイトです。
https://www.youtube.com/watch?v=9jMtBbTqCOs
http://galaxym31.naturum.ne.jp/e1670927.html
この場を借りて、感謝いたします。
それでは、以下に私の改造例を簡単に紹介しましょう。もちろん、すべて自己責任です。これを真似してカメラを壊してしまっても、一切責任を負いませんのであしからず。分解方法については、意識的に詳細な説明をしていませんが、カメラを壊してしまう覚悟がないのならば、絶対に行ってはいけません。
必要な技術:カメラや時計の分解、組み戻しの経験
必要な知識:精密機械や電子機器の構造や基本原理
必要な工具:精密ドライバー、ピンセット、カッター、ガラス切り
と、思い切りハードルを高くしておきますが、実際に一番必要なものは、何が起きても「まあ、何とかなるさ」という図太い神経といい加減な性格かもしれません。
1.ネジの位置を確認し、その役割を推察する
2.カバーを分解するためのネジを外す
3.カバーの取り外し
無理な力をかけないように注意し、液晶画面部をすり抜けさせて外す。
4.液晶画面ユニットを分解するためのネジを外す
この時もネジの位置を確認し、その役割を推察する。
5.液晶画面ユニットを分解した状態
矢印で示したパーツが、分解時のロック・キーとなっている。
6.電子基盤の取り外し
基盤につながっているフラット・ケーブルをすべて外すこと。
7.撮像素子ユニットの取り外し
8.電子基盤、撮像素子ユニットを分解した状態
9.撮像素子ユニットを分解するためのネジを外す
10.撮像素子ユニットを分解した状態
11.赤外線カット・フィルターと代替えフィルター
赤外線カット・フィルターは両面テープで接着されているので、カッターで注意深く剥がしとる。
このとき、撮像素子との間にスペーサー(黒い枠)があるが、代替えフィルターの厚みの関係で
このスペーサーごと外し、代替えフィルターを両面テープで撮像素子に直接接着した。
※代替えフィルターについて
赤外線カット・フィルターを外してしまうと、ピントを結ぶ位置が変わってしまうため、そのままでは無限の位置のある星にカメラレンズでピントが合わなくなってしまいます。分かりやすい例でいうと、水の底に見える物体が、水を抜く前と後では見た目の位置(深さ)が変わることが分かります。これは、水の屈折率のために起きる現象で、フィルターのガラスが無くなると焦点を結ぶ位置が変わってしまうのです。これを補うために、代替えフィルターが必要なのです。ただし、天体望遠鏡に直接カメラ・ボディーを取り付けて撮影することに限定すれば、この処置は必要ありません。
この代替えフィルターですが、やはり光学的に優れた品質のものを使う必要があるため、11月の「中古市」にて¥200でこのためにプロテクター・フィルターを購入し、これをカットして使用しました。
フィルターの大きさは、実際にカメラを分解しないと分からないので、分解後にカット作業を行いました。
したがって、カメラの組み立て作業は翌日に行い、2日がかりの作業となりました。
さて、分解以上に難しいのが組み立て作業です。先に紹介したブログにも書かれていましたが、分解の途中でどこからともなく金属部品がこぼれ落ちてくることが多々ありました。そんな時に役立つのが、分解途中で逐次記録写真を撮影しておくことなのです。また、外したフラットケーブルを元に差し戻すのも至難の業です。
とにかく、トラブルの発生は組み立て時のほうが圧倒的に多いことを、肝に銘じておくことです。そして、そんな時に役立つのが経験であり、「まあ、何とかなるさ」といういい加減な性格なのです。
実際に、私も致命的なトラブルに遭遇しましたが、何とかしのいでしまいました。そして、最終的に何一つ部品を余らせることなく、再組み立てを終えることができました。
組み立て後に通常の撮影をすると、当然ながら全体的に赤っぽい画像になりましたが、ホワイトバランスをマニュアルで設定したところ、白昼のもとでは修正しきれずにエラー表示は出ましたが、かなり改善することができます。また、一番肝心な天体写真ですが、前回の投稿で紹介したように、オリオン座の「燃える木」や「馬頭星雲」と呼ばれる赤い星雲を、この市街地でも何とか写すことができました。

その後、月がどんどん太ってきて空が明るくなってしまっているため、月明かりの影響がなくなるまでもう少し我慢して、写真撮影を再開したいと思います。そして、良い成果が得られましたら、またこのブログに投稿いたします。